「JISSOスクールヒストリー」
(創立10周年記念誌に寄せられた小泉 孝昭氏(YJC理事)の抜粋と追記)
JISSOスクールは創立当初の平成18年から始まり、毎年開催されて参りました。
発端はYJC創立の4年前、平成14年度横浜国立大学教育研究高度化プロジェクト「次世代エレクトロニクス実装技術に関する学内連携による基礎研究」で大学内の3教授が「エレクトロニクス実装」というキーワードで結ばれ、これをきっかけに「よこはま実装交流会」が発足、
産業界やそのOBも多く参加する場が形成され、YJCの発足に至ったと記されています(平成19年3月30日 産学連携のあり方を探る―よこはま高度実装技術コンソーシアム(YJC)からの報告)。その中での白鳥理事長の発足当時の主旨を咀嚼すると「企業が得意とし、大学が苦手とした後工程の実装の研究を工学レベルまで引き上げる必要がある」と言えると思います。
また平成21年度横浜国立大学共同研究推進センター委託事業「エレクトロニクス実装技術者教育の課題と解決策に関する調査」では「企業内でもあまり行われていないシステマティックな実装技術教育により専門化された技術者が実装技術全体を俯瞰でき、商品開発と設計能力を持ち、中小企業も自ら商品を開発しビジネスを展開するようにしたい」と述べられています。
この大きな二つの観点をベースとして「JISSOスクール」が始まったと理解しております。実装をJISSOと表記するのは、このワードが世界標準だからです。
樹木はしっかりした根を張り、先端から成長して行きます。スクール全体の「根」の部分はやはり最初の「若手技術者のためのJISSOスクール2006」ではないでしょうか?
このコースは実装が今後いかに重要か、また実装の重要要素の工程や材料、半導体や電子部品、信頼性、熱解析、故障解析が解説され、まさにまずエレクトロニクス実装全体を俯瞰する内容になっており、その後、基礎コース、根幹コースあるいは中小企業対象の即戦力コースの中に取り込まれています。
基礎コースは時代が変わっても変化のない根本原理を重視した構成で、大学教授による数式を交えた理論と企業OBによる実践経験からの原理原則を学ぶ内容となっております。
その後、CAD設計と回路シミュレーションを講座に加え、商品開発に対応できるよう内容を拡大しました。これ以降CAD設計に関して(株)図研様の多大なるご協力をいただくことになります。
基礎コースの根のもと、枝が伸び、国の補助事業として第1次安倍内閣時(平成20年度)に求職者を中心に実装関連業務に就く前段の興味を持ってもらう「再チャレンジコース」が2回開講しました。その後は「入門コース」として出前ありを宣伝しましたが、残念ながら声はかかりませんでした。
さらに経済産業省関東経済産業局平成20年度人材育成事業として講義だけでなく同時に実業のイメージや体感を重視する実習コース(プロセス、CAD)を加え、神奈川県産業技術センター、(株)メイコー様、(株)図研様のご理解、大いなるご協力のもと、故障解析や薄膜膜形成実習、製造現場見学や作業実習、パソコンを使ったCAD設計を加えました。
また神奈川県産業競争力強化事業として基礎コースの上位コースとして修士レベルの「深掘りコース」を実施しました。この特徴は実装ビジネスに関する講座を加えての幹部養成を意図したものでした。年度末の3月には(一社)エレクトロニクス実装学会定期講演大会のチュートリアルセッションに共催し、今日に至るまで毎年続いています。
平成21年度になりますと、経済産業省中小企業庁平成21年度ものづくり分野の人材育成確保事業に採択され、「即戦力養成コース」を実施しました。このコースは中小企業の技術者が実装の基礎知識のみならず、日頃現場で直面する課題解決に役立つよう、基礎コースに電子工学・電子回路の講義を加え、また実習コースの現場訪問やCAD設計、さらには生産管理、品質管理、現場改善も取り入れた14日間の幅広い、まさに即戦力を養成する内容に、定員を超える応募がありました。このコースでは分析・評価企業の(株)ケミトックス様の訪問も新たに加わりました。
平成22年度は「即戦力コース」を継続し、平成23年度、関東経済産業局の補助事業の継続して自主事業の「基板プロセス学習コース」と名付けて(株)メイコー様、日本アントム(現アントム)(株)様の御協力を得て実施することが出来ました。
一方「即戦力コース」は22年8月に新たに中小企業にも大変重要な知財戦略として「特許申請」の講座を加えました。
平成24年度は「基礎コース」の“基礎”というのは初心者と間違われないか?との疑問が出され、ネーミングを検討して“根幹”としようということになりました。考え方と内容は従来の基礎コースと変わりません。
自主事業の「基板プロセス学習コース」ではEMS大手のシークスエレクトロニクス様が実装ライン見学も含め部品実装の講義もお引き受けいただき、同社の事業展開・生産技術展開を含め、参加者に大いに参考になりました。
プリント配線板については(株)メイコー様の本社・神奈川工場にお邪魔して、以降毎年継続させていただき、感謝に堪えません。
平成25年度は「根幹コース」「基板プロセス学習コース」を前年同様開講しました。しかし平成23年以降受講者数が定員を下回り、当年度も減少に歯止めがかかりませんでした。
そこで平成26年度は大幅リニューアルして、全体を通じて実装技術を俯瞰でき、かつ個々の専門講座を半日単位で受講できる、各コースは3日間に統一、またオープンプラットフォームとして各社相互発表を入れるなど新しい試みを行いました。アンケート等からのフレキ基板への関心に応え、山下マテリアル様のご協力を得て、新たに講義と見学が実現しました。
YJCの別の側面の研究開発プロジェクト(KAMOME プロジェクト)の理論的側面や現状把握を補足するため「先進パワエレ実装コース」を設けました。
この時のコースは他に「基礎コース」「実装設計コース」「実装加工コース」「現場見学コース」「信頼性コース」で、合計6コースです。
基礎コースには業界、地球環境の講座を加えました。この結果トータルの受講生は前年の3倍になりましたが、実装設計コース、信頼性コースは人が集まらず、結局中止せざるを得ませんでした。
平成27年、スクールの樹は先端が伸びた感じです。先進パワエレ実装コースの2年目、そして前年中止となったコースを集約して信頼性講座を基礎コースに納め、設計は中止し、受講生の利便性を考え、みなとみらいランドタワーの横浜国大サテライトキャンパスの教室をお借りしました。実装加工コースは昨年同様です。
秋になりNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のパワーエレクトロニクス人材養成事業に大阪大学と並んで横浜国立大学が採択され、その実務フォローにYUVEC/YJCが携わることになりました。
この講座は「先端パワーエレクトロニクス技術体系教育講座」として2コースから成り、ベーシック・コースは大学の先生方による講義と実験、アドバンスト・コースは実業界の話を中心に企業見学やこの道の世界的権威の先生の特別講義など、NEDOの期待する傑出した人材育成に対応した全体にレベルの高い講座になっています。平成27年度は準備期間、平成28年8月に第1回ベーシック・コース開講、12月に第1回アドバンスト・コース開講となり、その後経過を見てトータル5年継続される大きな事業です。
この事業が終了後は、よこはまパワーエレクトロニクスカレッジ(YPEC)として、YUVECが主催する新たな事業として生まれ変わり現在に至ります。
従来のスクールは「基板プロセス学習コース」に絞り、内容は(株)メイコー様、シークスエレクトロニクス(株)様での講義と見学を毎年開催しています。(現在はコロナ禍で開催を見合わせています)
この状況が緩和されれば従来の講義と見学に加え、好評だった横浜国立大学でのプリント配線板資機材各社の相互発表の場も設けたい所です。